経済学を学ぶ意義

第29回経済教育学会シンポジウムでの発言要旨

経済学を学ぶということ…私の視点

岩田 年浩

1.経済を学んでどういうことが役に立つのか

経済の持つ(社会構造の中での)土台としての役割。
政治・文化・人間関係に影響。

経営学との違い…現象から本質を追求していく経済学の分析
手法は抽象化を特徴としており、経営学の例外事象を取り込み分類していく研究方法とは大きく異なる

キーワードも経済学の「均衡」(マルクスの再生産表式論も同じ)と経営学の「管理」「戦略」と大きく性格を異にしている。

しかし、経済学と経営学は隣接科学である

経済学派間のどこで区分の線を引くかは時代によって変化してきた。利害の対立にかかわる学問でもある。

2.(対立しながらも)すべての経済学に共通する観点

市場とは何か。
市場の調整機能はどの程度十分か不十分か。

合理性の観点(経済学においてはすべて啓蒙思想の流れの中にあるが、効率性か公平性かに価値観が分かれて行った。

【経済学の主な諸学派】

1.資本制批判のマルクス経済学
 …元は啓蒙思想の一派で、根本的には公平を理念としていたが…
2.資本制の枠内でも近代理論
 …根本は共通して、効率を理念としている
 ①ケインズ経済学
  …市場の調整機能は不十分として政府の保護介入を主張
 ②マネタリズム(新自由主義)経済学
 …市場の調整能力は高いとして競争原理を主張
 ③制度学派
 …個人の行動が制度によって規制されているという額説

ほとんどの経済思想・額はを横断した、ミニマムエッセンシャルズの必要。

3.経済学の果たす役割

・経済学の目的は何を基準に市場経済は動いているのかという原理を明らかにすることにある

・一般に、経済金融知識は市民にとって必要な経済知識の獲得にあり(経済学は悪徳商法対策を含む日常生活のルール)、経営管理能力、国際化に対応できる能力などに不可欠

・ところが、これまでの日本の学校教育では経済分野は社会科の中でも暗記的分野であり、内容的には弱かった

・その根本原因は日本経済と経営の国家依存体質が本来の市場経済社会とかけ離れてきたということに求められる

・経済教育はもっと重視されてよい

・そして、経済学研究者の養成


4.現場で教育上の配慮の必要がある

・この市場経済を学生や生徒が理解していく上では、生活実感の広がりや学習意欲の度合いに差があることが理解されなければならない

・例えば、小学生・中学生・高校生・大学の1・2年生と3・4年生、さらに修士課程の院生と博士課程の院生では内容の広がりと深まりにさがあって当然である。


5.経済教育がうまくいっていない点

・教材の研究準備に手を抜かない…経済社会の情報収集と現状分析の中で、メッセージを送る側の驚きや発見が大切。

・生き方にかかわる話が描けるとよそ事になりがち

・これらを適当にすると授業は形だけのものになりやすい

・資格の獲得をはっきりとした目標に持つ、医学や法学と違い日本の経済教育の場合は目標や内容がはっきりしにくい。つまり、経済を学ぶことのモチベーションが弱い。

6.経済の授業を組み立てる上で考えるべき要因

・自分の教育目標の確認(研究者を育てることか、勤労者としての知識やセンスを持たせることか、やがての起業に役立てることか、経済の常識を身につけさせることか

・何を教えたいのかの内容

・その内容をどのように教えるのがよいか

・どこまで教えるのがよいか

・変動する経済の状況把握

・額はの対立点や政策的帰結の対立点に客観的であること


7.教員にとってメッセージが伝わらなくてはどうにもならない

学生諸君に何をどのように、どこまで伝えるか…ホームページで全国の大学教員のためのコンサルタントルームを開いてきた

・現代日本の大学生の変容

・学生の教員評価は授業の効果を高める宝の山

・教育を軽視する日本の大学教員の体質

・情報機器の活用の必要とその落とし穴…独自の授業支援プログラムを開発・実践

・学生がどこで間違った理解をするかを詳細に把握する必要がある
 …昔は質問カード(今はメールでの)整理と回答準備の効果


8.経済知識を生かす

・関心を広げ(関心が少なく、知的情報の少ない者がコピーペーストへ走る)、異質なものを結びつけること

・経営学と関連させて経済学を生かすこと

・若者が未来を奪われてはならない…世のため人のために生き抜ける、自立した人に。偏差値社会の中で生き抜く力を。

・人格の形成こそ経済教育の目標

・合理的な自分の作戦を立てて実行する、自分を高める、モチベーションを絶やさない。


以上



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