経済学教育とファカルティ・デヴェロプメント
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経済学教育とファカルティ・デヴェロプメント
関西大学総合情報学部 岩田年浩
京都大学経済学部ファカルティ・デヴェロプメント研究委員会にて報告 2001.1.24
Ⅰ はじめに ―経済学教育の何が問題か―
内容か、方法か
教員か、学生か
制度(学部のカリキュラム、入試、学校教育等)か
Ⅱ 経済学の内容そのものの問題
1 教える内容の再検討
研究対象の変化が著しく、定常状態を想定しがたい.。他の科学との違い。
特に本格的な資本制に向かおうとしている日本経済の変化、景気変動の変容、地球環境問題の深刻化など
これらのことから、経済学を学ぶ必要性や期待は高まっている.
経済理論を柱とした、教える内容の再検討が求められている
2 従来からの問題
近代理論における合理性の仮定と現実との距離。
教員によって教える内容が大きく異なる経済学の基礎教育の内容。
ジャーゴンが多い(P.A.Samuelson Economicsで7,654の見出し語)。
3 経済学教育に対する、よくある誤解 -- 「現実を取り上げればよい」「教え方の問題だ」など
ハード・サイエンスとしての経済学の性格は無視できない
数理経済学を学ぶ意味、複雑系の経済学、実験経済学、レギュラシオン理論なども
こうした問題を解決しようとする方向ともとらえられる
Ⅲ 効果を上げる教育方法の問題
1 個々の教員によってやり方は異なって当然
2 しかし、誰でもやってみるべき方法はある
- セメスターでの授業の組み立て(教え、鍛えるべきことと、学生の求めているものの双方向からの検討が大切)
- どうすれば、教育の効果が上がるかの定量的定性的な分析
- どこで、メッセージが伝わっていないか、誤解しているかの把握・・・質問カードが有効
3 学生を受身から脱却させる方法
- 対立する学派や議論の論争を目の当たりで展開する
- イシューズ・アプローチ
- テーマによるブレーン・ストーミング
- 現場へ連れて行く(企業が経済や経済学をどのようにとらえているか)・・・企業経済や経営への関心を高める.
- ゲーミンク゛・シミュレーション
- 授業に招くゲストスピーカーや集中講義の講師などを学生に選ばせる .
Ⅳ その他の問題
1 学生の問題
- 問題意識が無い.分析能力が弱い.生活体験が少ない.自主的に勉強しない.
- 集団化が苦手などの傾向はある. しかし、今日では大学と大学生は一律に規定できなくなっている
2 制度的問題
- 大学院生が経済学教育の意味等を学べるように、入試の受験科目の再検討(政治経済、世界史、数学)
- 教員の教育活動を支援する組織
(教育の名人などではなく、ファカルティのメンバーがやる気の起こる情報提供・情報交換・カウンセル)
Ⅴ 報告後の質疑応答から
- 経済学部としてのコア・カリキュラムが(大阪大学や東北大学のように)出来ないのが悩みだ
- 経済学は学派に分かれ、またイデオロギー的な対立もあり、全体像がスケッチできない
- 法学部の学生は勉強し、成績を上げる事が将来の資格や職業に結びつくが経済学部は全く違う
- 経済学の場合、どういう人材を育てればよいか難しい. 研究者か企業で能力を発揮できる人か、起業者か.
岩田の意見
- 全ての先生から入門・中級・上級のブックリストを出してもらい、学内外に公表してはどうか
- 京都大学の経済学は多様性が特徴的だから、あえてコア・カリキュラムをつくる無理はしない方が良いのではないか. むしろ、これだけ優れた研究者がこんなことをしているという情報を明らかに示すことがいいのではないか
- 旧7帝大での教育は他の大学と異なると思う. 学生の意識等の点で.
- 研究と教育を結び付けやすい
- テキスト作りは大切で、結局優れたものが残らざるをえない