
IS-LM分析の理論と実証
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香ばしいマクロ経済の理論と実証ー回帰分析を使ってー
2005年度 山名ゼミフルメンバー
ランダムに変動する経済データその中にどんな秩序がはたらいているのでしょうか?回帰分析を使って、理論を実証するコツと厄介な問題をさがす旅にご案内します。
目次
1.モデルは何のため? (中村、藤井望)
2.一般式は何のため
所得定義式(松内)
消費関数(大束)
投資関数(谷)
純輸出関数(中野)
貨幣需給均衡式(弘重)
3.回帰式の説明―実際の日本データ(1955~2000年)を入れると
消費関数(細田、王)
投資関数(須賀、藤井(薫)
純輸出(田村、野村)
貨幣均衡(大北、清水)
(所得定義式) (琳琳)
4.均衡値の求め方(北橋、陳)
乗数効果
不況対策がわかる(工藤、吉岡)
まとめ
1.モデルとは何のため?~理論と実証~
- ある現象yがある主因xの変化に依存している場合、それは数学的には y=f(x)なる関数で表されます。これはある現象を数学的にモデル化したものです。したがって、経済理論を数学の関数で表したものは、経済理論モデルと呼ばれることになります。
- 経済理論モデルは、現実の正確な描写というより、市場の「見えざる手」の機能がどれだけのものかを説明しようとする仮説です。
- この理論モデルに実際のデータを投入して証明する、計量分析を紹介しましょう。
- エコノミストはこうした理論と現実の緊張関係の中で、有効な結果を求めています。
では、私たちの実験はどうなることか、おそろしや
2.-① 所得定義式
y≡c+ⅰ+g+x(X- IM)
y: 所得...国民総生産額=総支出
c: 消費...一般家計の購入する財・サービス
i: 投資...家計と企業の投資購入
g: 政府支出...政府の財・サービス
X: 輸出...財・サービスの輸出
IM: 輸入...財・サービスの輸入
この式は需給一致式です。
需給一致式とは...
事後的に需要=供給になることをいいます。
つまり、左辺のyは供給で、右辺のc,i,g,x は需要ということになります。
自分を追い詰める「努力主義」に陥らずに、ワクワクしながら能動的になりたい
わかりやすく説明すると...
左辺 y :どれだけ売った(儲けた)か?
=供給
右辺 c,i,g,x :何に使ったか?だれが買ったか?
=需要
y≡c+ⅰ+g+x(X- IM)
なぜ輸入額を差し引くかと言うと...
輸出(X)から輸入(IM)をひいたxは純輸出である。つまりxは貿易黒字または赤字の状態を示しています。
2.-② 消費関数とは
消費関数とは、 所得と消費の関係を表す式であり、そして消費関数によって、消費が所得にどれだけ依存しているかがわかります。
式で表してみると...
C= a+bYC:消費
a : 独立消費
b : 限界消費性向(0<b<1)
Y : 可処分所得(所得ー税金)
図で表してみると...

要点
独立消費(切片)と限界消費性向(傾き)は正の数です。
同じ所得の中でもどれだけ消費するかは限界消費性向に依存するものであり、単純に所得が増えれば消費が増えるわけではないのです。
例えば貯蓄をたくさんする国としない国では変わってきますね。
2.-③ 投資関数
I=+eーdr
I:投資 e・d>0:係数 r:利子率
式より、利子率が下がれば投資が増えることによって、r(利子率)の係数が負となることがわかります。
でも、なぜ利子率が投資に影響を与えるの?
械設備や工場を拡張するため、設備投資をしよう!
でも、膨大な資金が必要なんだなぁ。。。
しかし、
銀行から投資のために借りたはいいけど、
将来返さないといけない。。それに
加えて利子も支払わないと・・・(ToT)
だからといって
投資を自己資金からまかなったとしても、
投資のために用いなければ
得たはずの利子所得をあきらめなければならない。

2-④ 純輸出関数:x=f-my-nr
x=f-my-nr において
x:純輸出
y:所得
r:利子率
f,m,n>0:定数
純輸出関数:x=f-my-nrの意味は
純輸出関数とは輸出-輸入の式です。利子率rが上がると純輸出xが下がります。その理由は、その国の利子率が上がると、その国の通貨の価値が上がり、例えば日本の場合だと円高になります。すると輸出商品の価格が上がるため、輸出が減少します。また国内所得yが上がると純輸出xは下がります。これが一般的な現象となります。
2-⑤ 貨幣の需給均衡
市場での貨幣の需要供給の均衡を表す式。
式で使う各記号をそれぞれ
M=名目貨幣供給
P=価格水準(物価)
M/P=実質貨幣供給
y=所得(生産)
r=利子率
と定義します。
0年代のアメリカ経済の復活・繁栄と重なるこの間、
①小中高から大学まで(社会科・経済科・英語科・技術科などを通じて)、個人が小さい企業をどのようにして起こすかの教育が大規模になされてきた。
②11才から29才までの若者の2/3が起業を起こす意欲を持っており、自らが経営のトップになりたい希望が1/2を越えているという調査結果が公表されている。・・・小遣いは休暇中に稼ぐ、大学では奨学金が当然という社会。MBAを取ると所得は2~3倍であり、若者の夢はビジネス・スクールへ向かう。MIT出身者の内約35%が従業員300人未満の若い企業に就職する(日本では、大企業へ就職することがすばらしいとされている)。
そして、アイディアそのものに価値を認める風土(日米の特許制度の違いにも現れている)
③アメリカのGDPは1987年の4兆5000億ドルから2002年の9兆8000億ドルへと2.17倍になったが、サービス業の付加価値は同期に7800億ドルから2兆ドルへと2.56倍に急成長している(Census of Service Industriesより)。その原因はコストダウンを動機としたアウトソーシングの進展にあった。起業家教育はこうした経済のサービス化・脱工業化とによる収穫逓増のニューエコノミーと連動してきた。また、外生的要因としての移民増加による人口増(2002年の人口は2億8320万人)もプラスに作用した。
④各地の教育センターや企業がそのためのプログラム(ネット上でも)を開発している。つまり、自分の夢や希望を企業の立ち上げによって果たしたい傾向が強い。・・・現代のアメリカ文化とも言えるのではないか。プログラムの中には、環境ビジネスや企業の社会的責任にふれた部分(法律問題として)もある。
⑤求められるビジネス・リーダーの資質はコミュニケーション能力・感性やセンス・熱意であって、経歴や学歴ではない。これは、進行するネットワーク社会をプロデュースする能力と言える。しかし、サラリーマンやOLでも創業を目指すタイプと自分の時間を大切にするタイプに2極分解している。
⑥また、こうした小企業(スモール・ビジネス)の勃興とそれに対応する小口の金融機関(総資産10億ドル未満のコミュニティ銀行―数の上では96%だが、資産合計は20%を占める―)がアメリカ経済を根本から活性化させてきた。さらに、従来のニューヨーク市場などと異なるNasdaq市場が創業を支えてきた。Nasdaqはピンクシート市場の約2万社の気配値が日々公表され、その内から優良銘柄が選ばれ(上場でなく)登録・公開されて形成されているもので、取引所という場を持たずにネットワーク化された市場である。例えば、マイクロソフト、インテル、サンマイクロシステムズ、デル・コンピュータなどが短期間に株価を上げ、資金を集めてきた。資金調達における株式市場の位置は大きい(日本との違い)。また、アメリカの株式市場・債券市場に向けて世界の資金が流入してきた事情もある。
⑦大学がコンサルタント機能をもったインキュベート施設をもっている(日本と違う)。
⑧連邦政府は次の5点の公共政策で起業をサポートしてきた(American Formula For Growth, Kauffman Foundation 2002)
・小企業への資金市場の充実
・ 研究開発と知的所有権問題への準備
・ 技術開発の能力をもつ人材への投資とベンチャー企業への移動の促進
・ベンチャー企業の立ち上げを容易にし、新しい市場を切り開くこと
・これらのためのインフラストラクチャーの整備
⑧つまり、戦争とデモクラシーの2つの顔を持つアメリカ社会の中で、人々はこのような根強い文化を創り上げてきたと言える(つまり、フロンティア精神とボランティア精神からなる)。そして、建国以来アメリカ国家自体がベンチャーともいえるし、今回のイラクへの戦争を肯定する素地が起業家精神とあまり矛盾無く培われてきた。特に90年代の民主党政権の時代は"ソフト・パワー"と呼ばれる、経済に力を入れた(ニュー・エコノミーの)時代で、今日の共和党政権のようにパワーが戦争に向けられた時代とは異なる。